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医療介護
便秘を知って、爽快な健康生活を
情報誌けあ・ふるVOL.95(2018/4) 掲載

横浜市立大学 大学院 医学研究科
肝胆膵消化器病学教室
主任教授・診療部長

中島 淳 先生

「出ない」だけでなく、「出しにくい」も該当

快食、快眠とともに快便は健康のバロメーター。朝、「すっきり、つるん」と出れば、1日を気持ちよく過ごすことができます。便秘といえば何日も排便できない状態と思われていますが、スムーズに排便できない症状も便秘に含まれます。便秘は気分がイライラしてストレスが溜まるだけでなく、大腸がんなど重い病気が隠れている可能性もあります。横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳先生に、便秘の原因や対策についてうかがいました。

女性だけでなく高齢男性にも多くみられる

便秘と一口にいっても、個人差が大きく、受け止め方は人によって違います。1日便通がないだけで便秘と感じる人もいれば、数日出なくても、違和感を覚えない人もいます。 2017年に発刊された「慢性便秘症診療ガイドライン」では、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しています。つまり、便通がないだけでなく、「便が硬い」、「強く力む」、「残便感がある」、「腹部に不快感がある」など排便が困難な状態も含まれます。こうした便秘に悩む人は、60歳未満では圧倒的に女性に多いのですが、それ以降になると男性も増え、80歳を過ぎると男女ほぼ同数になります。中島先生は「便秘は若い女性の病気というイメージがありますが、むしろ高齢者のほうがリスクは高まります。高齢化の進展で男女とも今後さらに患者が増える可能性があり、十分な対応が必要になります」と指摘します。

原因や症状などからさまざまに分類される

便秘の分類は、さまざまな視点から行われます(表)。原因から「器質性」と「機能性」に、症状から「排便回数減少型」と「排便困難型」に、病態から「大腸通過正常型」と「大腸通過遅延型」、「便排出障害」に分けられます。女性に多く見られるのが大腸の動きが低下し便の通過が悪くなる「大腸通過遅延型」です。通常食べたものは小腸から大腸に移動すると水分が吸収されながら、ぜん動運動によってコロコロ転がされて、直腸へと移動して肛門から排泄されます。しかし、女性の場合は女性ホルモンが影響し、大腸の動きが低下してぜん動運動が弱まることがあります。そうするとなかなか便が運ばれずに停滞し、便秘になりやすくなるのです。高齢者に多いのが、「排便困難型」で、「便の出口が緩まない」、「便を押し出せない」タイプです。大腸の動きは正常ですが、老化で直腸や肛門付近の筋肉が衰え、肛門がうまく開かないため、あるいは腹圧が低下したり、直腸収縮力が弱まったりするために、便を出しにくくなります。 ほかに、大腸がんなどで腸管が狭くなり、便が通過しにくい場合や、服用した薬の影響で便秘が起こる場合もあります。便秘が続くようであれば、病気や薬の副作用が考えられるので医師に相談しましょう。

便秘を解消・予防する5つのポイント

便秘を解消・予防するための基本は、生活習慣の改善です。中島先生はそのポイントとして、次のような点を挙げます。①「1日3食、規則正しく摂る」。健康な状態であれば、食事を摂るとぜん動運動によって便が直腸に運ばれ、直腸が便で一杯になると便意が起こります。食事をしないと便が作られないので便意も起こりにくくなります。ですから、1日3回の食事を欠かさず、特に朝食は必ず摂るようにします。食事量を減らすダイエットにも気をつけましょう。②「食物繊維を積極的に食べる」。食物繊維には便を柔らかくしたり、便の量を増やしたりする作用があります。海藻、野菜、果物、きのこなどを積極的に食べるようにしましょう。ただし、便の通過が遅いタイプの便秘だとお腹が張ってしまうことがあるので、摂りすぎには注意が必要です。③「水分を十分に摂取する」。水分が不足すると、便が硬くなり便秘が起こりやすくなります。④「適度な運動を行う」。運動は、自律神経のバランスを整え、腸管の働きを調節するメリットがあります。⑤「定期的にトイレに行く」。食事の後は便意がなくても意識してトイレに行く習慣をつけます。排便しようとしないと、その状態に慣れて、次第に便意を感じにくくなります。便意を感じなくなると、便が肛門あたりまできていても出なくなってしまうので、この習慣づけは大事です。

前傾姿勢をとると排便しやすくなる

排便時のもう1つのポイントは、排便の姿勢。中島先生によると、排便にはしゃがんだ姿勢が理想だといいます。「しゃがむと前傾姿勢となりますが、排便にはこれがもっとも適しています。この姿勢になると、直腸と肛門がまっすぐになって、便を出しやすくなり、肛門を締めつける括か つやくきん約筋が緩むためです。イヌやネコなどの動物もみなしゃがんだ姿勢で排便しています」(中島先生)。和式トイレなら自然と前傾姿勢になりますが、洋式トイレではそうはなりません。中島先生は「洋式トイレの場合は、上半身が前傾しにくいので、膝をお尻より高く上げて直腸と肛門をまっすぐにするとよいでしょう。足元に踏み台を置き、背骨と太ももが35 度になるような姿勢をとると、排便しやすくなります」とアドバイスします(図)。

市販薬は常用せずに医師の診察を受ける

生活習慣を見直しても便秘を繰り返すような場合は、市販の便秘薬を使うのも1つの方法です。もっとも身近なのは、センナ、センノシド、アロエ、ダイオウなどの生薬が配合された「刺激性下剤」と呼ばれるタイプで、腸を刺激してぜん動運動を活発にし、排便を促します。ただし薬局で簡単に手に入るため、つい頼りがちですが、これらには依存性や習慣性があり、毎日飲み続けるとどんどん量が増えていきますので注意が必要です。市販薬は、旅行中や体調不良で便秘になった場合の一時的な利用にとどめて連用は避けましょう。 中島先生は「たかが便秘と軽視する方もいますが、背後に大腸がんなどの病気が潜んでいる可能性もあります。重症化する前に、適切な治療を受けてください。“快便”は健康のバロメーターですから」とアドバイスします。